生命保険会社って、保険料をどうやって決める?〜神様のお告げがある村で考える〜

生命保険会社って、保険料をどうやって決める?〜神様のお告げがある村で考える〜

保険料、高い!生命保険会社って儲けすぎでは??いやいや、実はそうでもないんです。というお話です。

生命保険、高い!

生命保険って、どうやって料金決めてるの?って思いませんか。この前友達が「月の保険料が3万の保険入った」って言っていたのすが、冷静に月々3万円支払い続けるって簡単ではないですよね。だってそれを何十年も払う訳ですよ。その保険料ってどうやって決めてるのか?どういう議論がされてその保険料になるの?という話を、実際に大手生命保険会社で保険料を計算していた筆者が、物語形式でご説明します。

実は保険料の決め方は超単純!〜神のお告げがある100人の村〜

昔昔、アンデス山脈の奥の方に神様のお告げがある100人の村がありました。アンデス村としましょう。

アンデス村暦100年の1月1日、新年で盛り上がっている中、神様のお告げがありました。

今年の年末に3人、俺様の力で、この中からランダムで殺してやる・・・

村人たちは大慌て。頼むから自分だけはその3人に入れないでくれと願いました。皆、大切な家族がいて、自分が死んだら家族は路頭に迷ってしまうのです。もし自分が神様に選ばれてしまっても、何とか家族だけは幸せに暮らして欲しい・・・。

そこで村人は話しあって、その不幸な3人には、せめて1,000万円の保険金を支払って遺族の生活費にしてあげようということになりました。とはいえ、その3人が誰かはわかりませんので、全員が年の始まりに保険料を出して、村の貯金箱に入れておくことにしました。

これが生命保険です。

誰が死ぬかはわからないから、予め全員でストックしておくのです。

1人に1,000万円ということは、3人で3,000万円が必要です。それを100人で負担するので、1人あたり30万円必要ですね。この30万円を純保険料といいます。

現代の保険会社では神のお告げはありませんが、統計というお告げがあります。だいたい今年は何人が死ぬというのはわかるので、出費も計算できれば収入も計算できるのです。

ここまでのまとめ:純保険料(30万)=決まっている支出額(3000万)÷負担人数(100人)

ある日、ジョナサンがキレた!

さてこのアンデス村には、ジョナサンという若者がいました。ジョナサンは働き者だったので、1人30万円を皆から集める係になりました。しかしいざ30万を集金に回りだすと、「次の給料日まで待って」だの「やっぱり払いたくない」だの、皆勝手なことを言いだしました。

100人の家を回っているうちについに疲れがピークに達し、ジョナサンはブチ切れました。

こんなに大変な仕事してるのに、なんでボランティアでしなければいけないの!?そもそも集金にも車のガソリン代とかかかってるんだよ?やってられるか!

キレた挙句お金をもって逃げられても困るので、緊急村会議の結果、ジョナサンには集金係の賃金として、100万円をあげることになりました。当然、100人でジョナサンの賃金を支払いますので、30万円の純保険料の他に、1人1万円を余分に出すことにしました。

この1万円を、付加保険料といいます。

この時点でアンデス村の住人は、1,000万円の保険金のために、31万円を支出することになりました。この31万円のことを、営業保険料といいます。私たちが支払う保険料は、営業保険料です。

ここまでのまとめ:営業保険料(31万)=純保険料(30万)+付加保険料(1万)

現代の保険会社では、この付加保険料の中身は社員の人件費、オフィス代等にあてられています。この付加保険料の差が、だいたい会社の営業保険料の差になってきます。

ジョナサン、すごいことに気付く

気をとりなおしたジョナサンは、無事、31万円の集金活動を再開しました。しかしいくら決め事とはいえ、31万円は大きなお金です。隣の家のポールさんの家なんか、毎月の収入が少ないのになけなしのお金を出していました。何とか負担を軽くできないものか・・・。

ポールさんのことを考えているうちにもの凄いことに気づきました。

ちょっとまてよ?そういえば株式会社アンデス鉱山に投資すれば、1,500万の投資で年末には3,000万円になると聞いたことがあるぞ・・・!?ということは、今手元に1,500万円さえ集めることができれば、年末に必要な3,000万円を用意することができるぞ!

ということで、ジョナサンは1,500万円を100人から集めることにしました。つまり、本来ならば30万円の純保険料が必要なはずですが、投資して増えることを見越して、15万円の純保険料を集金することにした訳です。ただしジョナサンの賃金である付加保険料の1万円はかわりませんから、営業保険料は16万円です。

現代の保険会社も、ジョナサンのように、集めたお金を運用をして保険料を少しでも下げる努力をしています。ただし、運用の結果お金が減ってしまって「当初予定していたお金、払えませんでした、すみません〜!」は許されませんので、そうならないように実際にはあらゆる投資理論を駆使しながら、ローリターンではあるが確実な運用をしています。

神、急に詳細なお告げをしだす

そんなある日、神がこんなお告げをしました。

そういやこの前3人殺すといったけど、そのうち2人は50歳以上のやつから、1人は50歳未満のやつから殺すからそこんとこヨロシクm(_ _)m

急に詳細なお告げが下りました。このお告げを受けて、村の50歳未満の人たちが怒りだしました。

俺たちの方が死ぬ確率は低い(=保険金を受け取れる可能性が低い)のに、死ぬ確率の高い人と保険料が同じなの、おかしくないか!?

言い分はもっともなので、リスクに応じた保険料を再計算しました。50歳以上の人は50歳未満の人の倍のリスクがあるため、保険料も倍ということになりました。その結果、はじめは全員から15万円の純保険料を徴収して合計1,500万集める予定でしたが、50歳以上の人からは20万円、50歳未満の人からは10万円徴収して合計1,500万集めることにしました。(アンデス村は、偶然50歳以上と50歳未満がそれぞれ50人ずついたので10万円×50人+20万×50人で1,500万集められました)

当初の純保険料・・・15万×100人=1500万
再計算後の純保険料・・・10万円×50人+20万×50人=1500万

現代では、各年齢ごとの死亡率がわかっています。しかも男女でも死亡率が異なることも統計的にわかっています。

もっというと、とある病気にかかったことがある人の10年以内の死亡率とか、30年以内の死亡率などもわかっています。それらをもとに、リスクに応じた純保険料を計算することで契約者ごとの平等性を保っています。

ちなみに、リスクの中には「急に解約が大量発生するリスク(アンデス村でいうと、村人が「やっぱり俺は金払わん!」と言い出すリスク)」などもありまして、それも純保険料の中に入れられています。つまり、ポールさんが急に金払わない!といったら合計で1,500万円集められないことになり、運用しても年末に必要な3,000万に到達しませんので、念のため予め1人あたり余分に3,000円くらい徴収したりすることでそのリスクに備えています。(今回のお話では、ややこしいので細かいリスクは抜きに考えています)

それぞれのリスクごとに、全員で負担すべきリスクなのか、それとも年齢ごとに負担すべきリスクなのか、それとも性別ごとに負担すべきリスクなのか考えており、これらの複雑な計算の結果純保険料が算出されます。

付加保険料(ジョナサンの賃金)にも傾斜をかける

さて、アンデス村に話を戻します。50歳以上と50歳未満の純保険料はそれぞれ20万、10万円となりました。ジョナサンの賃金は100万円(1人1万円)ですから、営業保険料はそれぞれ21万、11万です。

すると、50歳以上の人から不満が出ました。

純保険料が倍なのはわかる。しかし、これでは保険料の差が大きすぎる。せめて付加保険料(ジョナサンの賃金分の保険料)だけは、安くしてもらえない?

そこで、ジョナサンは自分の賃金の100万円のうち、80万円を50歳未満、残りの20万円を50歳以上の人からもらうことにしました。その結果、営業保険料は以下のようになりました。これで、全員が満足する保険料の計算が完了です。

50歳未満・・・純保険料(10万)+付加保険料(1.6万(80万÷50人))=11.6万
50際以上・・・純保険料(20万)+付加保険料(0.4万(20万÷50人))=20.4万

現代では、付加保険料の内訳ごとにそれが全員で負担すべきお金なのか、それとも一部の人だけで負担すべきお金かなどを考えて、各契約者が負担する付加保険料が決められています。

アンデス村、年末を迎える

さて、ジョナサンは無事皆から合計で1,600万円をあつめ、100万円は自分のものに、1500万円はアンデスコインの投資に回すことができました。年末には予定通り3,000万円になりました。

そしてついに、神のお告げの日になりました。農作業をしていた善良な村民3名が、突然の落雷によって命を落とす結果となりました。しかし、準備していたお金がきちんと遺族に支払われ、遺族はそのお金で当分の暮らしが担保されることとなりました。

めでたしめでたし。保険料はこんな風にして計算されているのです。

現実世界では、これをもう少し複雑にして保険料が計算されている

アンデス村では、単年の死者数が明確に決まっていて、かつ死亡時期も明確に決まっていて、かつ全員が年始に一気に保険料を支払うため計算が楽ですが、現実世界ではもう少し話は難しいです。

実際の世界では死者数は変動しますし、死亡時期もまちまちです。つまり人によってはそれほど運用期間がないまま死亡したり、逆に十分な運用期間の後死亡する人もいます。また保険料も年始に一気に支払う訳ではなく、毎月支払います。つまり保険料の払込期間中に死亡したりすると、計算がまた複雑になってきます。このあたりは、「アクチュアリー」という、保険数理学の専門集団が統計学を駆使して保険料計算をしています。

同じ死亡率を使っているのに、なぜ会社によって保険料が変わるの?

①付加保険料の差

わかりやすいところでは、付加保険料の違いです。例えばアンデス村のジョナサンは100万円の賃金(付加保険料)をとっていましたが、50万円で同じ仕事をするよ!という人も今後きっと出てきます。

また、先ほどジョナサンがやっていた傾斜のかけ具合も保険料に差を作ります。例えば30代をターゲットとする商品では、30代からもらう付加保険料をできるだけ下げて、他の年代からもらう付加保険料を増やしてトントンにするというようなこともあります。これらが、営業保険料に差を生みます。

②死亡率の差

実は死亡率も会社によって独自の死亡率を使っています。なので若干純保険料が異なります。

独自といっても、本当は3人しか死なないのに50人が死ぬとして計算すると保険料がバカ高くなりますから、3.01人が死ぬとして計算するなど、常識の範囲内で独自のものを使用しています。実際は、金融庁の厳しい認可を受けた死亡率だけが保険料計算に用いられます。

保険種類ごとに計算に使う死亡率を若干変えたりして、他社よりも有利な保険料を計算するというのテクニックを使うこともあります。さらに、各会社のリスクへの許容度も純保険料に差を生みます。たとえば、統計的には普通では3人死ぬけれど、もしかしたら突発的な地震で30人が死亡することも考えられます。

そこで、保険料をあげて競争力をなくす代わりに、何があっても確実に保険金の支払いをできるような保険料をとる会社もあれば、会社が損をする可能性はあるがそこには目をつぶって、3人しか死亡しない前提で保険料をとる会社もあります。このあたりは会社の戦略によって代わってきます。

③運用能力の差

つぎに、運用能力によっても保険料は変わります。例えば預かったお金を年1%でしか運用できない会社と、年3%で運用できる会社があった場合、当然後者の方が保険料は安くなります。とはいえ、だいたいの会社が主に日本国債などの債権で運用していますから、これによる保険料の差はあまりありません。

まとめ

もちろん、文明が終焉を迎えるまで終わりなき改良が続けられていくのではありますが、とはいえ今現在における数学的技術の最高を尽くして生命保険は設計されているんですよ、でもその計算の原理は簡単なんですよというお話でした。

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